お口の中の病気である歯周病と脳の病気である認知症、一見すると関係はないように思いますよね。
しかし、近年この歯周病と認知症の関連性についてさまざまなことが明らかになってきています。
歯周病の人は認知症になるリスクが高くなり、歯周病を予防することは認知症予防にもつながるそうです。
そこで今回は、歯周病と認知症の関係についてお話しします。
≪歯周病菌がアルツハイマー型認知症を促進させる?≫
認知症の中で最も多いのが、脳が委縮するタイプのアルツハイマー型認知症です。
これは、分解されず脳内にたまったアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質によっ
て神経細胞が死滅し、認知機能が低下するというものです。
九州大学大学院の研究チームによると、人間でいう中年世代にあたるマウスに歯周
病菌を投与したところ、マウスの脳内のアミロイドβが10倍に増加し、さらに記
憶力が低下するいう認知症のような症状が現れたそうです。
本来、人の体というのは、歯周病菌などが侵入すると、免疫細胞が働いて体を守り
ますが、歯周病菌が多く侵入した場合、免疫細胞が過剰に反応してしまい、その結
果、脳内が炎症を起こしてその炎症物質がアミロイドβを出すのではないかという推
測です。
さらに、アミロイドβは主に脳内で作られると思われていましたが、歯周病菌によっ
てお口の中の歯周組織でも作られることが明らかになりました。
また、通常脳にはフィルターのような機能があり、体で作られたアミロイドβは脳に
は侵入できないと考えられてきましたが、マウスによる実験では、歯周病菌がアミロ
イドβを脳内に運び込む受容体を増やして、脳の中にアミロイドβを送り込んでいるこ
とがわかったそうです。
≪歯を失うことも認知症のリスクを高める≫
日本歯科総合研究機構が発表した論文によると、60歳以上で残存歯の本数が15本
以上ある人と比較したところ、残存歯数14~本の人で1.4倍、1本も残っていない
人は1.81倍、アルツハイマー型認知症のリスクが高くなるという結果も出ています。
ちなみに、成人が歯を失う原因の第一位は歯周病です。
歯周病を予防することはご自身の身を守るだけでなく、認知症予防にもつながります。
≪脳血管性認知症も歯周病に関連≫
アルツハイマー型認知症に次いで多いのが、脳血管性認知症です。
これは脳梗塞や脳出血などによって、脳の血管が詰まったり出血したりすることで、
脳の細胞に栄養や酸素が届かなくなり、脳細胞が破壊され発症するタイプの認知症で
す。
このような脳の血管の病気は主に動脈硬化が原因になることが多いですが、歯周病菌
にはその動脈硬化を促進させる働きがあります。動脈硬化を起こしている血管の細胞
からは、よく歯周病菌が見つかることもあるため、歯周病菌は血管を介して全身に悪
影響を与えることが指摘されています。
※このように、歯周病はお口の中だけでなく、脳の健康も脅かす感染症です。
日々のケアと定期的な検診でしっかりと歯周病の予防・治療をしましょう!